菅原さんの所に味がわかるお客さんはどれだけ居る? と高野さんは僕に質問しました。
高野さんは自分の作る農作物の味わいを追求する農家です。
糖度計を片手に科学者のような冷徹な目で作物を判断する一面と、
好々爺のように出来の悪い子供たちを見守る一面が同居する方です。
高野さんはこう言います。
これだけ長い間農業をやっていても、5年に1度しかスゴく良いものができない。
そして5年に1度、大失敗する。後の3年はまあまあだ、と。
特にスイカやメロンなどの果物は年に一回の厳しい勝負。
長い時間、手間をかけて順調に育て上げていても、
収穫前の二週間の気温や風で「木が引いていって」糖度が上がらず失敗することがあるそう。
2012年がまさに木が引いた年でした。
人間には手が出せない領域で勝負するシビアさに背筋が伸びます。
失敗作というスイカをその場で食べさせてもらいました。
割ると少しすが入っていますがそれは八百屋やスーパーで買っても普通のこと。
食べてみると果汁の中の蜜は気持ち薄く、物足りなさはあるかもしれないなという程度です。
一般的に見てこれが失敗なら世の中の大多数は失敗ですねと告げると、高野さんはこう返しました。
売れば売れるけど、味がわかる人からの信用を失う。だから売らない。
そして冒頭の質問につながりました。
信頼される料理人になりたい。